今回は、爪水虫に有効な飲み薬として日本では以前に使用されていた「グリセオフルビン」という薬について取り上げます。
爪水虫の2大内服薬として「テルビナフィン(ラシミール)」、「イトラコナゾール(イトリゾール)」を紹介しましたが、過去にはこの「グリセオフルビン」が服用薬の主流でした。
現在は生産終了となっていますが、今後また利用される可能性もありますので「グリセオフルビン」について紹介します。
テルビナフィン、イトラゾナコールについてはこちらで紹介しています。
グリセオフルビンとは?
爪水虫の内服薬として、テルビナフィン、イトラコナゾールと並んで効果があると知られていたのが「グリセオフルビン」です。
現在は生産終了となっていますが、それまでは古くから爪水虫の治療薬としてグリセオフルビンも使用されてきました。
グリセオフルビンは、1錠の薬価は約11円(当時)という安価な薬剤であり、テルビナフィンやイトラコナゾールと比較してもとても安価な薬でした。
生産終了となったのは2008年。
生産終了となった主な理由としては、原材料の輸入がなくなったことによる国内での製造・発売を中止です。
テルビナフィンやイトラコナゾールの方が新しいのですが、こちらの効果の方が認められてきたという背景もあります。
日本では製造を中止していますが、海外では今でも用いられている薬です。
グリセオフルビンの内服方法
グリセオフルビンは角質親和性が低く、静菌的に働く薬です。(わかりにくいですね^^;)
角質親和性とは皮膚へのなじみやすさのこと、静菌的であるとは細菌の増殖を抑えるだけの効果を持つという意味です。
おおざっぱにいうと、皮膚からの吸収性の高さです。
角質親和性が低い(皮膚へのなじみやすいさが低い)と、角質層に対する吸収性が低くなります。
また、薬には「殺菌的」と「静菌的」の2パターンの作用があり、殺菌的作用はその名の通り殺菌することで菌をなくすことができます。
それに対して静菌的作用は菌をなくすことはできず、増殖・浸食を防ぐことができることを意味します。
殺菌的作用 | 殺菌して菌を死滅させる。外用薬の多くはこちらにあたります。 |
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静菌的作用 | 浸食を防ぎます。抗菌作用ともいえます。 |
ですので、爪水虫に対しての効果を期待した場合、白癬菌を殺す力はなく、菌の浸食を止めるだけにとどまります。
白癬菌の浸食を防ぐことは出来ますが、完全に爪水虫になっていない爪に生え変わるまで服用を続ける必要があります。
テルビナフィン、イトラコナゾールも同様に静菌的作用が働く薬で、6ヶ月間など爪が生え変わる期間にわたって服用します。
グリセオフルビンは1~2年の長期服用で効果を現わす薬とされており、長期間の服用が基本となります。
完治しないうちに内服を中止すると再発する可能性が高いため、自己判断で中止しないよう注意が必要です。
なお豆知識ですが、グリセオフルビンは難溶性(水に溶けにくい)であるため、脂肪の多い食事と一緒に取ると吸収性が高まるとされています。
そのため牛乳で薬を飲むと良いとも言われますが、服用する場合には医師の判断に従ってくださいね。
グリセオフルビンの副作用
グリセオフルビン服用の注意点として、爪水虫の内服薬の多分に漏れず、肝障害のある方には禁忌とされています。
また、副作用としては以下のものがあり、頭痛、めまいなどが報告されています。
- 胃の不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
- 頭痛、めまい、眠気、不眠
- 肝機能の低下
他の注意点としては、胎児への影響の可能性が示唆されています。
グリセオフルビンはマウスの動物実験において、染色体の異常分離を誘発したとの報告があります。
そのため、投与中の避妊だけでなく、女性の場合は内服中止後1ヶ月、男性の場合は内服中止後6ヶ月避妊をする必要があるとされています。
が、グリセオフルビンは男性の内服時の赤ちゃんへの影響が懸念される薬として挙げられるので、内服する機会がある方は注意するようにしてください。